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年金訴訟特別報告

           2003年2月
           全国検数労連中央執行委員会


港湾労使産別協定にもとづく、港湾年金が減額されたことに起因して、検数出身OB組合員9名(うち検数労連出身4名)が、港湾労働安定協会を相手に、減額分の支払いを求めて神戸地方裁判所に提訴を行いました。

一方の産別協定当事者である全国港湾労組協議会は、2002年12月16〜17日の幹事会で見解を発表し、本提訴を断じて認めない態度を明確にするとともに、原告団が進めているカンパなどの協力要請には応じない旨の指示を行っているところです。

検数労連中央執行委員会は、全国港湾労組協議会のこうした見解、指示にもとづき同12月18日、「港湾年金減額の訴訟に関する見解」を発表、4名のOB組合員に対しても「訴訟取り下げ」を求める文書とあわせて郵送を行っています。

最近になって原告団からの「裁判支援カンパ」等を要請された他のOB組合員等から、彼らの行っている裁判について、「検数労連中央はどういう立場なのか」という問い合わせが来ています。そこで再度12月18日付、当中央執行委員会の「港湾年金減額の訴訟に関する見解」を掲載します。

なお、お問い合わせやご意見のある方はホームページや電話などをつうじて、遠慮なくお寄せ下さい。

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港湾年金減額の訴訟に関する見解


2002年11月12日、港湾年金が減額されたことに関して、検数出身のOB組合員9名(検数労連4名)が港湾労働安定協会を相手に、減額分の保障を求めて提訴した。中央執行委員会は、本件に対して次のとおり見解を表明する。

1. 検数労連中央執行委員会は、全国港湾幹事会見解(12月16日付)を全面的に支持し、OB各位に提訴の取り下げを求める。

2. 各地域労連(支部)は、組合員が「訴訟を支援する会」への入会やいかなる支援・協力もしないよう徹底すること。
 
3. 年金額の減額は、港湾の取扱貨物量の減少による基金収入の減少と年金受給者の増加による企業の加重負担をふまえ、全国港湾の大会や評議員会における現役組合員の切実な声も反映して「制度の維持」を大前提に決断したものである。
これは、港運事業の厳しい経営事情を背景に、在籍職員の賃金・労働条件の切り下げや雇用調整をすすめている企業、在籍職員数と年金受給者数の逆転する企業などを中心に、年金原資の企業負担を滞納する企業や年金制度から脱退する企業が増加し、年金受給権利者が企業都合により長期間年金を受給できない事態も発生するなど年金制度の内部崩壊ともいえる動きに対して、港運労使が「年金受給権利者の救済」「制度の崩壊防止と維持」という共通の認識にたって、港運労使の自助努力として合意したものでる。
同時に、全国港湾は、財源確保としてユーザー負担を求めるたたたかいを組織し、「港湾労働運営基金(コンテナ:トン当たり1円)」を勝ちとり、安定協会の助成額を維持したうえで、企業負担分の軽減措置をはかった。

4. 一方、検数・検定関係でも、事業縮小にともなう経営悪化を背景に、在籍職員に対する犠牲策が強行されると同時に、新規採用や在籍職員の雇用形態を変更することによる実質的な新規登録の中止と登録抹消が先行して実施されるなど、企業内における港湾年金制度の形骸化がすすめられていた。
検数労連は、現役労働者の生活と雇用を守り、年金制度の維持をはかる立場から、全国港湾の方針を支持し、産別に結集した取り組みを行ってきた。

5. 提訴は、年金制度の維持を崩壊させかねない重大な内容をはらんでいる。
港湾運送事業の規制緩和についての運政審論議で、船社・荷主は「拠出金制度の廃止」を強く主張し、02春闘では「港湾労働運営基金」の継続を拒否する大手船社もあった。また今日、米国西岸の港湾労組(ILWU)に対する米国海事協会(PMA:世界の船会社で構成)の基金廃止攻撃と政府による争議規制(大統領によるタフト・ハートレー法発動)など、世界の船会社が結束して各国の拠出金制度の廃止攻撃を強めている。
一方、港運事業者も、企業の加重負担を回避するために、制度からの逃避を求めている。
こうした環境のもとでの今回の提訴は、「制度の維持」に努力している港運労使の関係にひびを入れ、ひいては年金制度の崩壊、産別協定と中央港湾団交の基盤を揺るがす事態に発展しかねない重大な内容をはらんでいる。

6. 提訴はまた、検数労使にとっても予断を許さない影響をおよぼしかねない。
すでに検数両協会の年金受給者数(OB)と職員数(現役)の比率は「100対202」で、現役1人当たりの負担は5万円となっている。年金額の5万円減額は、現役世 代に2万5千円の負担軽減をもたらしている。とりわけ、人件費比率が事業収入の90%以上を占めるている検数にとっては、この数年、毎年100名単位の定年退職者数を抱えていることから、OBと現役の比率がさらに縮まり、現役にとっては労働条件のさらなる圧迫要因となりかねないことも事実である。提訴した原告OB諸氏の行為は、こうした現役世代の実情を無視した身勝手といわざるを得ない。
さらには提訴が、現職の賃金カットや雇用調整をすすめている検数協会に、年金制度からの脱退の口実をあたえかねないことも懸念せざるを得ない。

7. 検数労連は、提訴による影響を阻止し、年金制度をはじめとする産別労使協定や中央 港湾団交の維持・発展にむけ、全国港湾に結集して奮闘すると同時に、その妨害行為については断固たる態度でのぞむことを表明する。
以 上